国内外を問わず、放送を聞こうと思ったら当然 「受信機」 が必要なワケで、最初に聞いた外国語放送は親父のお古のポータブルラジオで。
それから当時まだ存命であったおじいちゃんにねだって買ってもらった、ナショナルのクーガ 115 というのを愛用してました。
これはクリスタル発振子を挿すジャックがあり、どうしても受信できなかった 「アンデスの声」 を聞くために、 9750kHz(←まだ周波数覚えてるし・笑)のクリスタルを買ってきて挿してみたりもしました。
しかしいくらそんなコトをしても、アンテナが貧弱では聞こえるものも聞こえず、全神経を耳に集中しても聞こえてくるのは雑音だけ。
そんな悔しい思いが次の 「アンテナ」 につながってきたりもします。
当時は周波数をデジタル表示する受信機なんてのはなく、あっても非常に高価でとても中学生ごときに手が出るシロモノではなく、そのためチューニングダイヤルを髪の毛一本ほどの微妙な幅で動かしたりしてました。
この 「髪の毛一本」 というわずかな幅に、実にいろいろな 「音」 がひしめきあってたんですよネ。
何度も往復してると、次々と聞こえてくる放送や雑音の順番を覚えてしまったりしました。
何か知らん局の英語放送
↓
雑音
↓
ジャミング(敵国の放送にかぶせる妨害電波)
↓
中国の中央人民放送
↓
怪しげなモールス信号
みたいに(笑)
そんなワタシの心を熱く揺り動かした受信機がありました。
ひとつは TRIO(現・KENWOOD)の R300 。
ダイヤルがふたつもあって、いろいろとツマミもついてて 「何だかスゴイ」 と(笑)
もうひとつはドレークの SSR-1 ですネ。
これは黒一色の R300 とは対照的にメタリックあるいは白で統一されており、受信機というよりは 「高級ステレオ」 というイメージでした。
そのシンプルな外観からはバーニャダイヤルをつけた真空管受信機が想像され(笑)、
「コレで JJY を聞いて、方眼紙で周波数とダイヤルの相関グラフを作らねばならんのだろうか」
とまったく的違いの想像をしてたりもしました(爆)
そして最も魂をゆさぶられた受信機。
八重洲無線(現・バーテックススタンダード)の FRG-7 です。
(写真提供:ラジオ工房様)
コイツにはあこがれた。
もう心の底から憧れました。
当時の金額で 59,000 円という、中学生にはほとんど無理のような金額でしたが家庭内アルバイトに精を出し、お年玉を貯め、両親からも援助をもらい、やっと買った時の感動というか達成感、充実感は忘れられません。
見ての通り、 「ラジオ」 とは一線を画すシロモノで、見るからに 「無線機」 という感じです。
これに MIZUHO のマーカーやアンテナカップラ、プリセレクタをつなぎ、もうそれこそ夕飯もそこそこにかじりついてました。
前に使っていたクーガ 115 もかなりいい機械だったのですが、 115 では 20kHz 程度で判別不能となっていたマーカーの発信音も、 FRG-7 ではキレイに分離してくれました(ような記憶があります・笑)
土曜日の夜。
寝静まった家の中で、自室の灯りを消し、 Z ライト(←これもなつかしいケド・笑)だけを点けて FRG-7 のチューニングダイヤルを髪の毛一本ほどの幅でまわしていく。
ヘッドフォンからは次々と各国の放送や雑音、ジャミング、モールス信号などが聞こえてくる。
お目当ての中国のローカル局が受信できた。
しゃべっている内容はさっぱりわからないが、やがて中国民謡風の音楽がかかる。
カーテンをあけて夜の街を見てみる。
まだ見ぬ中国の、雪深い山中の灯りが見えた。
貧しい灯りの下、厳しい農作業を終えた農民たちもこの音楽を聴いて一日の疲れを癒しているのだろうか。
おじいちゃんが孫を膝に乗せて聞いているのかも知れない。
あるいは仲間たちと酒を飲みながら聞いている青年たちもいるかも知れない。
当時中学生だったワタシは、こんな夜にはるばる中国から伝わってきた音楽を耳にし、こんなコトを想像していたんですネ(笑)
この FRG-7 のダイヤルって、全部オレンジ色で、電源を入れるとオレンジの光が黒いダイヤルバックにすごく映えます。
そんなコトも、世の中の世知辛さを知らない中学生に、こんな甘っちょろいイメージをふくらませる遠因になったのかも知れません(笑)
一度、恐る恐る中を開けてみたことがあります。
意外に中身はがらがらでした。
もっと、すごい、こう… 何て言うか… いわゆる 「メカ!」 ってのがたくさんつまってるかと思ったのですが、意外とすっきり(笑)
もちろん当時の最新技術が投入された受信機には違いないのですが、ちょっと気が抜けたりもしました。
それですっかり気がでかくなった愚かなワタシは、無謀にも周波数がプリントされたダイヤルをぐりぐりまわしたりもして、んなことすりゃぁ 当然にして表示される周波数と実際の周波数では大きな狂いが出ちまうワケで、あとからエライ苦労しました(笑)
随分と入れ込んだ FRG-7 ですが、いつしか机の置物となり、ブックエンドのかわりとなり、そして廃品回収に出してしまいました。
「あとの後悔先に立たず」 とはよく言ったもんで、まさしく後悔しまくったワケですが、この廃品回収のにいちゃんがたまたまこうした機械類が大好きな人で、 「これは商売抜きで自分で買い取りたい」 と言って、幾ばくかの代金を渡された覚えがあります。
ワタシの手元を離れても、こうしてまた好きな人のところに行くコトができたワケで、これはこれでよかったのではないかと、今ではそのように思ってます。